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歴代理事長の理念、障害福祉に対する熱い想いを継承し、利用者の皆さんが、「自分らしく」分別・差別のない人間の尊厳をもって、しあわせで生きがいを感じて働けるような支援を、役職員一同使命感をもって頑張ります。
そして、利用者役職員共に、元気に明るく笑顔で挨拶することが出来る日々を送れるよう、次の方針を基本に、頑張りたいと思います。 |
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令和7年度社会福祉法人自立更生会方針 |
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1,はじめに 基本理念の実現をめざして 「人間らしく働きくらせる社会を」
ⅰ 「改正障害者差別解消法」に対する国連障害者権利委員会の総括所見
2022年9月9日、国連の障害者権利委員会が日本政府に対して「改正障害者差別解消法」について総括所見を表し、懸念と欠陥を指摘すると共に今後の政策の推進を要請しました。障害者差別解消法は、2006年、第61回国連総会において、国連障害者の権利に関する条約が採択され、日本政府は2014年に批准、国内政策として実施してきました。その後、スイスのジュネーブにおいて、我が国に対する締約後の審査が行われ総括所見が発表されました。
その所見の主な視点は
(1)父権主義な国の政策
上から目線 障がい者は保護の対象
誰もが人間としての権利を有するという立場から離れている。
(2)健常者優先政策
(3)分離処遇
(4)精神科医療の非人道性
であり、さらに、障害者差別解消法において、救済の手続きが確立されていないことや日常生活の中で、暴力、虐待、搾取等、女性や女の子が直面している問題、人権侵害があったこと等も含めて、パリ原則に基づいた独立した監視システムがないことです。そして、選択議定書が批准されていないこと、法的能力が制限されている問題、性と生殖に対する権利も制限されています。
私たちは、障害者の生活の質を向上し、人権が実施されることを求めて、日常的に支援していくことが求められています。
改正障がい者差別解消法は、2024年4月1日より施行されましたが、障がい者への合理的な配慮の提供に関わる法的義務は、従来国や自治体のみに対するものでしたが、企業にも求められるようになりました。
ⅱ 「2025年問題」から「2040年問題」「2050年問題」
2025年は団塊の世代が高齢者になり、高齢者人口が3割を超えることにより、社会保障政策をはじめとして危機が叫ばれてきました。
そしていま、「2025年問題」から「2040年問題」が叫ばれています。2025年問題は、高齢者人口の増えることが指摘されていましたが、2040年問題とは、高齢者人口(65歳以上全人口の34.8%)がピークを迎え、若者人口が減少することであり、2025年から2040年という僅か15年間において、現役人口(20歳~64歳)が約1,000万人も減少するという問題です。
「将来人口推計」では、2025年に6,634万人となる現役人口(20歳~64歳)が、2040年には5,542万人にまで減少するという試算結果になっており、年間平均の減少スピードは約73万人となっています。これは1995年から2020年における生産年齢人口の減少スピード(年間平均48万人)よりも大きい値であり、日本経済は深刻な労働力不足に直面する可能性を示しています。
しかも事態が深刻なのは、生産年齢人口が急速に減少するにも関わらず、75歳以上人口は、2030年代に増加が一時落ち着くものの2054年まで増加が続くとされていることです。
岩手県の人口推計においても、2040年には93万8千人、2010年と比べ39万人(29.5%)減少すると見込まれています。総合的な社会課題の解決に向けた視点が私たちに求められています。
一方、2050年問題は、世界規模で地球環境がいまより悪化することを懸念しているものです。水不足、食料不足も懸念され、地球上の人口は増える一方で、食料生産と水の量はそれほど増えていませんので、資源をめぐり争いの可能性があると言われています。
日本の2050年問題は、少子高齢化や人口減少、地球環境問題、労働力不足などが考えられます。日本の総人口は9,515万人と3,300万人の減少(25.5%減少)、65歳以上人口は約1,200万人増加するのに対し、生産年齢人口(15歳から64歳)は約3,500万人減少、若手人口(0歳から14歳)は約900万人減少する。高齢化率は20%から40%へと高まり、介護職員不足や経済規模の縮小などが懸念されています。
ⅲ SDGsの基本目標達成に向けた取り組み
平成27年(2015年)に国連総会で採択された「貧困や飢餓・格差を地球上の誰一人として取り残さない」ことを令和12年(2030年)までの達成目標としたSDGsの取り組みがマスコミでも大きく取り上げられてきています。
それは、私たち福祉の目的そのものでもあり、政府や企業だけが取り組めば良いと言うものではなく、今後とも私達こそSDGsの担い手と言う認識を持って取り組んでいく必要があります。
ⅳ ロシアとウクライナ・イスラエルとパレスチナの戦争と世界・日本の政治経済と社会の動き
ロシア・ウクライナ戦争は、世界の政治・経済・環境問題をはじめ、大きな影響を与えています。戦争は女性や高齢者・障がい者に犠牲を強いるものであり、また一人一人の人権を奪うものであり、障がい者団体の一員として戦争絶対反対を訴えなければなりません。
それは国内における軍備拡大や非核三原則放棄の動きに対しても同様に反対しなければなりません。 |
2, 新型コロナウイルス感染拡大の中の法人経営と自然災害等の対策と備え
新型コロナウイルスの猛威が世界を駆け回り、現在は5類に移行しましたが、依然として感染者が多く、各施設の運営にも大きな影響を与えてきました。それでも生産活動においては、新型コロナ禍の中であっても職員・利用者の努力によって一定の成果を上げてきています。また、イベントへの参加と販売活動の参加、職員、利用者のコミュニティ不足の解消についても、研修旅行や食事会などを行い、改善に努めています。
自然災害(地震・台風・大雨)、火災、事故等に係る行動計画と定期的な避難訓練と備えの確認をし、利用者の安全安心の確保に努める必要があります。
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3,基本理念と目標
理念なくして意識改革なし、意識改革なくして行動なし
(1)基本理念
人間らしく働きくらせる社会をめざして
(2)基本目標
憲法25条 国民の生存権の実現をめざして
ⅰ 私たちは、互いにひとりの人間として尊重し合い、自己の修練と向上に努めます。
ⅱ 私たちは、常に利用者の立場に立って、そのニーズに応え、利用者の成長と自立を支援します。
ⅲ 私たちは、地域社会に参加し、人間らしく生きる社会の建設に向けて取り組みます。
ⅳ 私たちは、利用者の皆さんが、「自分らしく」、「しあわせと生きがい」が感じられるよう、自立を支援します。
ⅴ 私たちは、「元気に明るく笑顔」で、日々の挨拶に心掛け自立を支援し、自分自身の成長と喜びにします。
ⅵ 私たちは、利用者のいる現場を重視し、現場を理解し、課題を共有し、組織の中の自分の立場を理解し、ホウレンソウとコミュニケーション、ネットワークを大事にし、総合力を発揮します。
ⅶ 私たちは、前理事長の「どれだけ一人一人を心から愛しているか」それが形となり言葉になるというWBC監督の考え方は、私たち利用者の支援と相通じるものがあると言う伝言と、キャットカード職員の心得を引き継いで、利用者の自立の支援をします。
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4,各施設の現状と課題
国連の障害者権利委員会は、私たちの周りに人権意識に欠如する課題が山積していることを指摘しています。
その大きな課題が、障害者や高齢者に対する虐待問題でもあります。この間、法人として虐待対策研修会を開催し、虐待防止委員会を各施設に設置してきました。障害者や高齢者のみならず教育現場におけるいじめ問題も含め、マスコミにおける虐待報道は後を絶ちません。これらを他人事としてではなく、わが法人のこととして受け止め、対応することが求められております。
国内外の政治経済の現状は、ソーシャル・ファームをめざそうとするわが法人内各施設にも影響を与えております。ソーシャル・ファームとは、「労働市場において障がい者など不利な雇用条件下にある人々を雇用し、自立と社会参加を究極の目標」としています。
それはまた、SDGs17の目標の主なものに、1.貧困をなくそう 2.飢餓をゼロに 3.すべての人に健康と福祉を 10.人や国の不平等をなくそう 16.平和と公正をすべての人に、などがあります。環境問題だけでなく、差別や飢餓、不平等をこの地球上から無くしていくためには、まず身近な私達の周りから取り組むことが大切です。
また、障害施設の現状と大きな課題は、障害年金と工賃の合わせた金額が、憲法25条で保障されている生活保護の最低基準に達していないことです。
憲法25条の主な内容は、
第1項 国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第2項 すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
この条文は、国民が人間らしい生活を送ることが出来ることを保障しており、社会福祉における重要な理念と位置付けられています。25条の規定を実現するために、生活保護法や児童福祉法、国民年金法、国民健康保険法などの社会保障制度が設けられています。
職員が保障されているように、利用者の皆さんも等しく保障されるような支援が必要です。
盛岡アビ 農福連携、企業連携による新商品開発の更なる推進と生産拡大の調査研究
老朽化に伴う施設補修計画
盛岡杉生園 新たな組織体制での生産体制の強化と生産拡大の調査研究、支援体制の強化、若手職員の人材育成
新たなグループホームの建設
缶詰事業等生産基盤の有効活用
ひめかみの風 新たな体制での農福連携と園芸花卉栽培の強化と生産拡大の調査研究
生活介護支援の取り組み、利用者確保、人件費比率対策(6年12 月末予算ベースで89.1%)
宮古アビ 収支・人件費比率が改善方向であるが、引き続き支援費収入の確保と生産拡大の調査研究
花巻アビ 安定した射出成形事業の追求と新たな事業展開の調査研究
施設設備の老朽化修繕計画
新人職員の育成と後継者の発掘
北上アビ 数年後を展望した職員体制の確立と属人化の解消
経験年数の少ない職員の人材育成
オンデマンド印刷機とカッティングプロッタの新規導入
とばせ園 花苗・味噌加工・菓子・総菜を中心に継続しての商品開発と生産拡大の調査研究
天候に適応した農事の安定生産対策の調査研究
A型の施設外就労の拡大、展勝地公園の指定管理者移行後の受託体制の構築と受注拡大
グループホームくろいわの老朽化対策
7施設それぞれ、素晴らしい商品開発等をしてきていますが、現状に甘んじることなく、スピード感をもって、強みを伸ばし、弱みは積極的な見直し、廃止の調査研究も行い、現状の弱みからの脱皮に努めることを期待したい。
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5,法人本部の強化
(1)理事会活動の改善
法人と施設経営に理解を深めるために、各施設の実態を把握できるよう、理事と施設の意思疎通を図ります。また、法人本部の職員は、定期的に各施設を訪問し、施設運営の相談・支援活動に取り組みます。
(2)本部事務局
時代の変化、国の政策の変化が著しく、本部機能は年々、その比重が高まってきています。施設長も本部事務局員として位置づけておりますので、施設長会議等を活用し、本部としての一体的運営に努めます。
(3)経営会議・施設長会議
毎月1回、施設長会議を行い、7施設の経営について施設長同士で点検し、検証し、健全運営に努めますが、時代の変化に合わせ、年3回(6月・10月・1月)の施設長会議をウエブ会議とします。。
また、経営会議は、評議員会、理事会前段に開催し、執行機関としての責任ある意思決定と法人運営に努めます。
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6,安全安心なサービス提供
◎ コロナは5類に移行しましたが、安心して働けるよう、職員の休暇制度について、国や県、市の動向を見ながら対応して参ります。
◎「虐待防止委員会」・「身体的拘束適正化検討委員会」
利用者の信頼を確立するため、年1回以上、虐待防止委員会及び身体的拘束適正化検討委員会を開催します。また、職員の意識向上を図るため、虐待防止及び身体拘束に係る研修を年1回以上実施します。
◎「なんでも相談」
利用者支援の傾聴として毎月、各施設で第三者委員による「なんでも相談」 を開催します。
◎労働安全衛生委員会
各施設では、小さな事故が続いています。事故や怪我の起きない職場環境を 作るために、整理・整頓・清潔が保たれているか、職場の点検活動を行います。
◎虐待防止委員会とコンプライアンス委員会
各施設に虐待防止委員会を設置してきましたが、何でも相談や目安箱の活用により虐待や権利侵害の課題発生時には、虐待防止委員会やコンプライアンス委員会と連携しながら対応して参ります。
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7,職員研修とスキルアップ
(1)全役員研修
今年も全役職員研修会を7月に開催します。
(2)職員研修の改善
昨年度から見直し開催しましたが、今年度も継続します。
① 初年度研修 採用後1~3年の職員 組織の中の初級の立場と役割
② 中級職研修 採用後10年前後 組織の中の中級の立場と役割
③ 施設長・副施設長研修 組織の中の管理職の立場と役割 |
8,地域連携の強化
県や国は、社会福祉法人における公的活動を求めており、施設における公益事業の調査を行っています。
わが法人は、「人間らしく生きる」ことを目標に掲げていますが、それは、施設の中だけでなく、社会全体が「人間らしい環境」となって達成されるものであり、地域社会と共に事業展開することを方針としています。
農福連携や各自治体の社会福祉協議会・自治会等と連携し、今日の社会的に取り上げられている「8050問題」「引きこもり」「認知症」「虐待問題」「買い物弱者」など、様々な地域課題解決に向け、積極的に行動します。
宮沢賢治 「社会全体が幸福にならなければ個人の幸福はあり得ない」
井深 大 「全ては、心から始まる、知識は後からついてくる。」
法人基本理念 人間らしく働きくらせる社会をめざして |
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